「堺が羽ばたく都構想」の真実

2013年6月2日

先日、大阪維新の会が「堺が羽ばたく都構想」という小冊子を配布し、遅まきながら堺市民に大阪都構想のPRを開始しました。ところが、『子供でもわかる解説冊子』といいながら、その内容たるや、数字の誤まりや誤字脱字の類はともかくとして、都構想の内容を本当に理解しているのかと首を傾げざるを得ない、惨憺たるものでした。とりわけ気になった点を紹介したいと思います。

1.『分割隠し』は継続

都構想を解説する上で最も重要な点、「都構想が実現すれば堺市が廃止・分割されるということ」を、維新の会は堺においてはひた隠しにしてきました。多くの堺市民の反対を受ける点だからでしょう。広報さかいの客観的な記事、住民投票条例案の検討により、維新の会も追い詰められ、『7つの区を再編し、複数の特別区へ』と公式に認めるに至ったものの、本冊子では依然としてどこにも記載されていません。本冊子の内容変更を検討する余裕もなかったからだと思われます。

2.すでに分割された状態?

本冊子は「サカイ君が7つに分かれてもう7年」という件で始まる。堺市が政令市になったことで、「すでに7つに分かれた状態」としているわけです。これは都構想で分割されることへの拒否感を和らげるための、一種の「分割隠し」に他なりません。一つの政令市内で一体感を持った「区」と、別の基礎自治体となる「特別区」を同列に扱うこと自体、地方行政に携わる者としての見識を疑わざるを得ません。それこそ「子どもでもわかる解説冊子」と称し、「どうせわからないだろう」と読者を子ども扱いしているのだろうかと思うしかありません。

3.国の財政状況が都構想の原点?

前半部分を読むと、家(国)の家計が危なくて仕送りが心配なので大阪府君と大阪市君が立ち上がった、つまり国の財政問題を何とかするために都構想は考えられたという説明になっています。しかし、都構想発想の原点は国の財政問題ではありません。大阪都構想推進大綱(大阪維新の会、23年11月。以下、「大綱」と略す。)はその冒頭で大阪の経済状況に関する警鐘を鳴らし、政府による大阪救済の可能性は低いと断じています。「大綱」も認めているように、本来、都構想は低迷する大阪経済の新たな成長を目標として検討されたものであります。根本認識に誤りがあると言わざるを得ません。

4.都構想が求める『戦略的な経済対策』のための『二元行政の根絶』

また、「大綱」には、『戦略的な経済対策』を行うためには都市としての一体的な経営が求められるにも関わらず、大阪市役所と大阪府庁の対立から二元行政の状態に陥り、『二重行政の問題も生じている』、と記されています。さらに、大阪市と大阪府との『二元行政の根絶』が大阪の新たな成長のための1つの成長戦略を実施可能とするものと位置づけ、大阪府庁と大阪市役所を再編し、1人のリーダーが成長戦略を実施できる体制を整備しなければならない、と明確に主張しています。

そして、ここでいう『戦略的な経済対策』のための『二元行政の根絶』と、堺市とは直接関係がないことは、「大綱」の記述からみても明らかであります。本冊子では、この極めて重要な点に関する言及を意識的に避けていると思われます。

5.堺市と府の間には二重行政はなく、二元行政の問題も生じない

にもかかわらず、本冊子(11ページ)には、『政令市になってたった数年で二重行政があったら大問題』との記載があり、堺市と大阪府との間に二重行政がないことを認めています。二重行政がないということは役割分担が適切であるということであり、役割分担が適切であれば二元行政(リーダーが2人)という問題も生じない。この点は従来から私が指摘してきた点であり、ぜひ本冊子で説明して貰いたいことです。しかし、本冊子はこの単純明快な指摘に敢えて答えようとせず、明確な反論を示していません。より正確に言えば、示したくても示すことができないのです。

6.「堺が“バラバラ”都構想」

そして、都構想への堺市の参加を主張する維新の会には、都構想の具体的メリットを示す責任があります。本冊子の表紙には『みんなで変えよう堺の未来』と書かれており、どんな堺の未来が描かれているのかと期待しましたが、その点に関する記述は皆無で、堺市民に対し、大阪府と大阪市に続けとばかりに都構想への参画だけを求めています。これでは「堺が“羽ばたく”都構想」どころか、単に「堺が“バラバラ”都構想」に過ぎないものであります。昨年秋から熟議してきた成果がこれかと思えば、落胆を禁じざるを得ない所です。

7.まとめ

私はこれまで、堺の未来像として、「子育てのまち堺」「歴史・文化のまち堺」「匠の技が生きるまち堺」という、「堺・3つの挑戦」と「災害に強いまちづくり」を掲げ、様々な政策を実行してきました。そして、出生率や交流人口、企業の本社流入数など、堺の色々な指標が大幅によくなってきています。私は今後もこの「堺・3つの挑戦」「災害に強いまちづくり」を推し進めていくつもりです。

一方で、私は「権限・財源の喪失」といった、大阪都構想の「具体的なデメリット」を指摘してきましたし、それは「堺・3つの挑戦」「災害に強いまちづくり」を実現する上での大きな障害になると考えています。

堺の未来に大きな影響を与える「大阪都構想」の是非については、市民の皆様に見える場で議論がなされる必要があります。大阪維新の会には、堺を無くして、堺を分割することによって、堺のまち、市民の生活をどのようにしようとするのか、どのような具体的なメリットがあるのかを示し、堂々と私と議論してくれることを、切に願っております。

堺市長 竹山修身


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